橋本薫コラム vol.3「国の失敗に惑わされない」

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国の失敗に惑わされない


日本が直面している超高齢社会のなかで、国民皆保険制度の持続可能性は、もはや避けて通れない大きな課題です。高齢化が進めば、当然、医療需要は増えます。結果として医療費も増大します。しかしその一方で、その制度を支える現役世代は減少している。さらに景気の低迷も重なり、社会全体の負担余力は確実に弱まっています。つまり、国民皆保険を守り続けることは、理念だけでは支えきれない、非常に厳しい局面に入っているということです。

厚生労働省は、この制度を維持することを前提に、診療報酬改定を重ねてきました。しかし、とりわけ調剤報酬をめぐる制度設計を見ますと、必ずしも一貫した方向性が示されてきたとは言いがたい。象徴的なのが、かかりつけ薬剤師制度とジェネリック医薬品政策です。

かかりつけ薬剤師制度は、本来、患者さんとの継続的な関係を通じて、地域医療の質を高めるためのものであったはずです。ところが現実には、一部の大手チェーンでは加算取得の手段として扱われ、制度本来の理念が損なわれてしまった。ジェネリック医薬品も同様です。医療費抑制の観点から推進されたものの、供給体制の脆弱なメーカーに過度な生産を担わせた結果、深刻な供給不足を招きました。ここから見えてくるのは、現場を十分に見ない制度は、やはり脆いということです。

その背景には、中医協をはじめとした制度設計の場と、現場実態との乖離があります。制度の議論そのものは必要です。しかし、供給体制の現実や地域医療の継続性に対する感度を欠いたまま議論が進めば、制度は理念として整っていても、運用の段階でひずみを生みます。

ただ、私は問題が制度設計側だけにあるとは思っていません。さらに深刻なのは、現場にもまた、「決められたことに従う」という受け身の姿勢が根強く残っていることです。政策が揺らいでも、現場が沈黙していては、何も変わりません。薬局と薬剤師の未来を、行政や審議会の判断だけに委ねてよい時代では、もはやないのです。

だからこそ、これから求められるのは、制度への適応ではなく、未来への意思です。薬局は何を守るのか。誰にどのような価値を提供するのか。地域において、どのような役割を果たすのか。その答えを、自らの責任で示していかなければなりません。

class A が大切にしているのは、まさにその視点です。薬局は、単に処方箋を受け付ける場ではありません。生活の中にある薬局だからこそ、人々の健康を維持し、健康意識を育て、地域の日常を支える存在であるべきです。言い換えれば、これからの薬局は、治療を支えるだけではなく、健康維持そのものを新たな事業ドメインとして持たなければならないということです。

私は、ここにこれからの薬局の未来があると考えています。一人ひとりが責任を持って考え、発信し、行動すること。その積み重ねこそが、医療の明日を形づくり、地域の未来を支えていくのだと思います。


橋本薫