橋本薫コラム vol.5「フォローの風の中で過ごす」

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フォローの風の中で過ごす


ゴルフをする人なら、きっとわかると思います。
向かい風の中で打つドライバーショットは、なかなかキツイもの。

上手くいったと思っても、ボールは風に押し戻されて、行ってみると横にそれてバンカーにある。次が大変。
人生にも、これとよく似たところがあります。

もちろん、逆風の中で頑張ることも大切。
人は向かい風の中で鍛えられることもあります。
けれど、いつもいつも逆風ばかりじゃ、さすがに疲れてしまう。

願わくば、人生はフォローの風の中で過ごしたい。

フォローの風とは、後ろからそっと押してくれる風。
ゴルフなら、ドライバーショットが思った以上に飛ぶ。
自分の力だけでは届かなかったところまで、風が運んでくれる。

仕事も同じでしょう。
何かを進めようとするときに、周りの人が少しだけ道を広げてくれる。
そういう空気の中では、物事はずいぶん楽に進むものです。

ただし、このフォローの風は、ただ待っていてもなかなか吹いてくれません。
これは自分で作っていくものなのですね。

では、どうやって作るかって?
人との関係を少しだけよくしておくことですよ。

たとえば、タクシーに乗ったとき。

「やあ、こんにちは」「ありがとう」くらいの言葉をかけるだけで、車内の空気は少し変わります。

たかがタクシーの中の30分。
それは、ただ目的地まで運ばれる時間ではありません。
自分の人生の30分でもあるんです。

しかも、考えてみれば、見知らぬ人と小さな密室で過ごす30分。

不思議なもので、コミュニケーションがあれば、自然と人は少しやさしくなります。
こちらが丁寧に接すれば、相手の声もやわらかくなる。

小さなことですが、こんな積み重ねが、人生のフォローの風をつくっていくのではないでしょうか。

レストランやホテルのスタッフ、薬局の受付の人、会社や近所の人。
どの人とも、ほんの少しだけよい関係をつくっていく。

そうすると、自分のまわりに、少しずつあたたかい空気が生まれてくる。

それは、強烈な追い風ではないかもしれない。
けれど、人生にはそのくらいの風で充分なことが多いのです。

ちょっと気分がよくなる。
ちょっと楽しい。

その「ちょっと」が、実は大きいのです。

逆風の中で歯を食いしばる人生も、もちろん立派。
けれど私は、できればフォローの風を受けながら歩いていきたい。
そして、その風は誰かが勝手に吹かせてくれるものではなく、自分の態度や言葉から生まれるものなんでしょう。

それだけで、人生のあちこちに、後ろからそっと押して応援してくれる風が吹き始めますよ。

ドライバーショットも、人生も、フォローの風に乗るとよく飛びます。
そしてその風は、案外、自分の何気ないひと言から吹き始めるんじゃないですか。


橋本薫