橋本薫コラム vol.6「気にかけるから、うまくいく」
気にかけるから、うまくいく
物事は、気にかけているかどうかで、見え方がずいぶん変わってきます。
同じ景色を見ていても、何も残らない人もいれば、いろいろなことに気づく人もいる。その違いは、能力というより、そこにどれだけ心を向けているかの違いなのかもしれません。
昔、関西空港ができるとき、空港における広告ビジネスの可能性を検証してほしいと頼まれたことがあります。その頃の私は海外出張も多く、海外の空港については、それなりに知っているつもりでした。
ところが、いざ「空港の広告」について考えてみると、これが困った。
あれほど多くの空港を利用していたのに、私は空港で見た広告をほとんど覚えていなかったのです。大きな看板もポスターもあったでしょう。企業からのメッセージも、きっと山ほどあったはずです。
それなのに、私の中には何も残っていない。
目には入っていた。けれど、心には残っていなかったんですね。
人間は、気にかけていないものを、案外見ていないものです。これは、考えてみれば、なかなか残念なことでもあります。
毎日見ているつもりのもの。よく知っているつもりの場所。何度も会っている人。そういうものほど、実はきちんと見ていないことがある。
これは、人間関係でも同じです。
何度も会っている人でも、気にかけていなければ、その人のことはわかりません。何に困っているのか。本当は何を言いたがっているのか。そういうことは、ただ一緒にいるだけでは見えてこない。相手に少し心を向けているからこそ、ふとした表情や言葉の変化に気づくのです。
仕事でも同じでしょう。
うまくいく人は、たいてい、いろいろなことをよく気にかけています。患者さんのこと。お客さんのこと。現場の空気。世の中の変化。
そうしたことに心を向けていると、誰もが通り過ぎてしまうところに、ちょっとした可能性の種が見えてきます。
ただし、大切なのは、それを損得だけで見ないことです。
目の前のことを、素直に面白がってみる。人の話を面白がる。街の変化や若い人の感覚を面白がる。自分とは違う考え方も、まずは面白がってみる。
実は、世の中には面白いことがいっぱいあります。
そうやって心に残ったものは、いつか別の何かと、ふっとつながることがあります。人生には、そんな小さなつながりが、たくさんあるのではないでしょうか。
だから、最初から否定的に見ないで、まず面白がってみる。
自分と違う意見を。人を。世の中を。そして、日々の小さな変化を。
自分のまわりにあるものを、ほんの少し丁寧に見てみる。面白がれば、見えてくるものがあります。見えてくるから、考える。考えるから、動き方が少し変わる。
その小さな違いが、物事を少しずつ、うまく運んでくれるのでしょうね。
橋本薫




